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Mini Album「Moment」

[通常盤]
KSCL-2716  ¥1,800(税込)

  • [収録内容]
  • 1. Look
  • [作詞:住岡梨奈 / 作曲:住岡梨奈]
  • 2.男の子と女の子
  • [作詞:岸田繁 / 作曲:岸田繁]
  • 3.彼方
  • [作詞:住岡梨奈 / 作曲:住岡梨奈]
  • 4. good morning, good night
  • [作詞:住岡梨奈 / 作曲:住岡梨奈]
  • 5.言葉にしたいんだ
  • [作詞:住岡梨奈 / 作曲:住岡梨奈]

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『彼方』

{ INTERVIEW }

 ちゃんと触れ合える距離で、ほんの少しの表情も温もりも感じ取れるような、そんな住岡梨奈のミニアルバム『Moment』。2月からスタートしたアコースティック・ライヴツアー「music wagon"26"」の最中にレコーディングが行われたこともあって、そこでたくさんの人と出会って感じたことが繊細な空気の振動となって伝わってくるような仕上がりになっている。
柔らかなアルペジオの音色に乗って26歳になった彼女の今を素直に切り取ったような「Look」を1曲目に、くるりのカバー「男の子と女の子」や、テレビ番組『テラスハウス』で共演した友人・今井洋介氏に向けて綴った「彼方」などを収録した今作。背伸びすることなく大事なものをちゃんと握りしめて今を歩いている住岡梨奈だからこそパッケージ出来る、“この瞬間”のきらめきに満ちている。

インタビュー・文/上野三樹


――そもそもアコースティック・ライヴツアー「music wagon"26"」は、どんな想いがあってスタートしたものだったんですか。

渋谷LOOPや代官山LOOPといったライヴハウスを経営しているエスエルディーという会社があるんですけど、まずはその方たちとの出会いがあって。カフェも経営している会社で、北海道以外はほぼ全国展開しているからカフェ・ライヴで全国ツアーもできますよ!というお話をいただいたのがきっかけでした。カフェというお客さんにもリラックスしてもらえる空間で歌うのは、すごく理想的なので今回実現出来て嬉しかったです。

――全国26ヶ所、基本的に車で移動されたそうですね。

はい、北海道や石垣島はさすがに飛行機なんですけど、今回は各地に車で移動して周ろうというのもひとつの挑戦でした。どこへ行くのもマネージャーが運転する車で移動していたので、時間的にも自由でしたし「ちょっとご飯を食べに行ってみようよ」なんて、ライヴ以外のことも楽しめました。特に北海道では函館から7ヶ所ずっと車で移動しながら、馬を見たり牛を見たり、雪が降ったりと、このツアーならではの色んなことを味わいました。

――以前からやりたかったカフェでのアコースティック・ツアーをこのタイミングで開催したことには何か理由があるんですか。

今までデビューして3回、バンドでツアーをしているんですけど。『テラスハウス』への出演もあって、急にお客さんが増えた状況に自分が付いていけなかったんです。そこでスタッフに「カフェでアコースティック・ツアーがやりたい」という話をさせてもらいました。「ちゃんとお客さんに会いに行こう」という気持ちが強かったんだと思います。今までよりも更に大きな場所を目指すというよりも、今いてくれているお客さんに対して何が届けられるのか?を考えました。私はちゃんとみんなと触れ合える場所にいたいなと思ったし、これからもそうだと思います。

――テレビでのイメージを持たれることが怖かったというのもあるんですか。

テレビと普段の私は大差ないはずなんですけど(笑)。怖いというよりは……私はお客さん全員と喋りたいくらいなのに、それが出来ないのはもったいないなって。テレビで見てるとか、曲を聴いてる、それだけじゃなくて、私はこの曲をこんな風に歌ってるよって直接伝えたい。私はやっぱり伝えたいことがあるから、ちゃんと自分と繋がって欲しいなと思ったんです。ライヴが終わった後に、ひとりひとり握手やお話をする時間があって、「私はこれがやりたかったんだ!」と思いました。

――そんな中で並行して今作『Moment』のレコーディングが行われたそうですが。

はい。ツアーも一緒にまわっていただいた橋詰遼(蜜)さんとふたりで、このアコースティック・ライヴの感じを詰め込めたらいいなと思い、制作しました。

――1曲目の「Look」は26歳の今を綴ったリアルな声という印象を受けました。

スヌーピーの名言集を見てた時に「何であんたは犬なんかでいるのよ」ってウッドストックが言うと、スヌーピーが「与えられたものでやっていくしかないんだ」みたいなことを答えていて、カッコイイ!と思って。私は自分に求められていること以上のことをしなきゃみたいなプレッシャーがあって、だからライヴが上手く行かなかった時はすごくへこむし、自分が思っているのと違うように伝わったりするとすごいショックだったりするんです。だからスヌーピーみたいに「僕は僕だから」って言えるのは「さすがです!」と思って(笑)。あんまり周りの目を気にせずに、自分で自分に楽してないか?ズルしてないか?という事だけを見つめて、人は人、自分は自分って思えたらもっと強くなれるんじゃないかって。そんなことを考えながら書いた曲です。

――梨奈さんは正義感が強い人なんですかね。自分も嘘をつかないし、周りにもそうであって欲しいから気になっちゃうとか。

そういう感じは、ありますね(笑)。自分がこうなのに、何であなたはこうじゃないの?みたいなところがすごくあって。でも自分が出来てないから人のことも気になるようなところもあるし。だから……私がんばれ!っていう(笑)。私が素敵だなと思う人って、ちゃんと自分の機嫌を取れている人たちなんですよ。だから不機嫌さを周りに示さないし、それで無理をしているようにも全然見えないから。ちゃんとコントロール出来ててカッコイイなって、そっちの方に私も行きたいです。

――〈ありのままの僕を見つけてね〉なんて歌詞もありますが。

そうですね。あんまり背伸びしても、自分を責めすぎても成長を止めちゃう感じがして。そのまんま今の自分を歌っているこの曲を1曲目にしました。

――2曲目は「男の子と女の子」。くるりの名曲のカバーです。

はい、実はハナレグミがカバーしていたことがこの曲を知ったきっかけだったんですけど。今回、マネージャーが「男の子と女の子」っていい曲だよね、カバーしてみたらいいんじゃない?って提案してくれて。橋詰さんと一緒にレコーディングすることもあって、まさに「男の子と女の子」だし、いいかもねって。

――特に好きなフレーズは?

終盤の〈好きだという気持ちだけで 何も食べなくていいくらい〉という部分です。〈女の子はわがままだ よく分からない生きものだ〉とか自分が言われているような気持ちで歌ったりしてるんですけど、でも結局は男の子は女の子がいないとダメなんだなって思わせてくれるような気がする曲で。歌えば歌うほど愛しい気持ちになります。

sumioka rina

――そして3曲目の「彼方」は「テラスハウス」で共演した友人・今井洋介氏に向けて書いたそうですね。

去年の11月くらいに、最初は誰に宛てるでもなく曲を書き始めたんですけど、読み返してみると「そうか、洋さんが亡くなったからこういう歌詞になったのかな」と思いました。そこから曲を完成させていったんですけど、「言葉にしたいんだ」を書いた時と同じくらい「なんでこんな苦しい気持ちを書かなきゃいけないんだろう?」っていう感じでした。思い出すことも辛かったし。でも、私は今この曲を書くべきだと思って。洋さんに向けてっていうのもあるんですけど、一緒に暮らしてきた仲間にも向けて、もう少し前向きになれたらなって。だから〈また会いましょう〉って歌いながら、会えるわけないって自分ではわかってるんですけど……大樹くんとか華ちゃんに会っても「なんか、いなくなった気がしないよね」「40代とか50代になってもまだ洋さんは夢を追ってるんだろうね」なんて話をしたり。洋さんはいなくなっちゃったけど、自分たちの中にはいるから、いつか会える気がするし。「彼方」は、過去に一緒に過ごした洋さんに向けてだったり、今いなくなっちゃった洋さん、未来はもしかしたらあんな風だったかもしれない洋さんに対して歌えたから、前向きな曲になったなと思います。この曲をツアーで歌って、みんなに聴いてもらえたことで、やっと自分が洋さんのことについて、受け入れられたと思います。本当は、この曲をリリースすることで色々と言われたりもするかなってすごく気にしてたんですけど……。

――それはどうしてですか。

たった半年しか一緒に過ごしていない私が作ったこの曲を、彼のご両親が聴いてどう思うんだろう?とか。自分や仲間や洋さんのご両親だけに、届ければいいんじゃないか?って。ツアーではその場にいる人に想いを説明できるし直接届けられるから歌ってたんですけど、今回はCDにして出すことで私の表情やどういう想いで作ったのかも音源だけで伝わるのか?っていうのが不安で。でもこの曲をリリースしたいと思いますって洋さんのご両親に伝えたら「嬉しく思います」というような内容のお返事をいただいて。もうそれだけでホッとして。洋さんのご両親が認めてくれたから私は歌えるし、それを手助けしてくれた身近なスタッフや、『テラスハウス』スタッフのおかげもあって、今回収録することにしました。

――〈恥ずかしいことなんて 何一つないよね〉という歌詞に思い出や優しさが詰まっているように感じました。

洋さんが変な曲を書いたり(笑)、泣いてしまったり、家出したり、バカだなって思うようなことも全部、テレビで全国放送されて。知らない人から罵倒されたり、色々あったけど、自分たちは真面目に生活してきたし、どんなことを言われても自分が言ったことに責任持ってるし。あの場所で暮らした人にしかわからないことってたくさんあるよねって、何も恥ずかしいことなんて無いよねって思うんです。こんなにも自分だけじゃない人との関わりの中で曲が出来て、今の私が感じた一瞬を閉じ込められたので、今回ミニアルバムのタイトルを『Moment』にしました。

――なるほど。4曲目の「good morning, good night」では、くるりの佐藤さんがベースを弾かれたそうですね。

はい、「男の子と女の子」をカバーした繋がりで今回お願いしてみたら、弾いていただけることになりまして。レコーディングは30分くらいで終わってしまって「もう、いいんですか?」ってお互いに言い合うくらいでした(笑)。曲自体は去年、初めての海外旅行でフィンランドに行った時に、泊まっていた部屋にたまたまあったガット・ギターを弾きながら作ったものです。爽やかな曲になりました。

――そして最後に「言葉にしたいんだ」のアコースティック・バージョンが収録されています。

今回は橋詰さんと向かい合って1発録りしたので、アコースティック・ライヴのまんまが出せていると思います。このミニアルバムは「彼方」も入って、自分の中でもずっと大事なものになっていくと思うので「言葉にしたいんだ」も併せて聴いてもらいたいなと思って収録しました。

――「言葉にしたいんだ」は既に代表曲のひとつとしてライヴでたくさん歌われてきたと思いますが、今この曲に対する想いというのはどういうものですか。

最初は『テラスハウス』を卒業するというタイミングで一緒に暮らしてきた仲間に向けて書いた曲だったんですけど。ライヴで歌っているうちにだんだん自分だけじゃない、みんなのものになっていった気がします。『テラスハウス』を見てなかった人にも「今の私の気持ちとリンクしました」なんて声をもらったりして。そして洋さんのことがあったことで、たくさん笑ったり泣いたりしたよね、なんて歌詞の意味も色んな思いが重なってきてる気がしています。曲って成長するんだなとすごく思ったので、またあらためて聴いて欲しいです。

――アコースティック・サウンドの中にすごくシンプルに梨奈さんが歌を歌う上で大事にしていることが伝わってくるような、温もりに満ちた1枚になりましたね。

やっぱり私は弾き語りが基本だな、と思いました。もちろんプロデューサーを含めバンドで演奏した作品も別の聴き応えがあっていいと思うんですけど。今回こうして少ない音数で、まずはライヴで披露してから、その新曲たちをレコーディングしてっていう流れもすごく満足しています。全国各地での色んな人との関わりの中で私自身、気持ちが柔らかくなったと感じていますし、これからもこの基本を忘れないようにやっていきたいなと思います。またひとつ、成長しました。

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